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パチュリー・ノーレッジのページ(暫定) 二つ名 知識と日陰の少女 動かない大図書館 得体の知れない魔法の元 花曇の魔女 能力 火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力 魔法(主に精霊魔法)を扱う程度の能力 (萃夢想より) 魔法(主に属性)を使う程度の能力 (求聞史紀より) 魔法を使う程度の能力 (地霊殿より) 出演作品 『紅魔郷』4面ボス、およびExtraステージ中ボス 『妖々夢』エンディング 『永夜抄』エンディング 『花映塚』エンディング 『文花帖(ゲーム)』LEVEL 5 『地霊殿』魔理沙支援キャラクター 『萃夢想』自機 『緋想天』自機 『非想天則』自機 使用スペルカード 火符「アグニシャイン」 東方紅魔郷 水符「プリンセスウンディネ」 東方紅魔郷 木符「シルフィホルン」 東方紅魔郷 土符「レイジィトリリトン」 東方紅魔郷 金符「メタルファティーグ」 東方紅魔郷 火符「アグニシャイン上級」 東方紅魔郷 木符「シルフィホルン上級」 東方紅魔郷 土符「レイジィトリリトン上級」 東方紅魔郷 火符「アグニレイディアンス」 東方紅魔郷 水符「ベリーインレイク」 東方紅魔郷 木符「グリーンストーム」 東方紅魔郷 土符「トリリトンシェイク」 東方紅魔郷 金符「シルバードラゴン」 東方紅魔郷 火&土符「ラーヴァクロムレク」 東方紅魔郷 木&火符「フォレストブレイズ」 東方紅魔郷 水&木符「ウォーターエルフ」 東方紅魔郷 金&水符「マーキュリポイズン」 東方紅魔郷 土&金符「エメラルドメガリス」 東方紅魔郷 月符「サイレントセレナ」 東方紅魔郷 日符「ロイヤルフレア」 東方紅魔郷 火水木金土符「賢者の石」 東方紅魔郷 符の壱「セントエルモエクスプロージョン」 東方萃夢想 符の弐「デリュージュフォーティディ」 東方萃夢想 金土符「ジンジャガスト」 東方萃夢想 火金符「セントエルモピラー」 東方萃夢想 土水符「ノエキアンデリュージュ」 東方萃夢想 金木符「エレメンタルハーベスター」 東方萃夢想 日&水符「ハイドロジェナスプロミネンス」 東方文花帖 水&火符「フロギスティックレイン」 東方文花帖 月&木符「サテライトヒマワリ」 東方文花帖 日&月符「ロイヤルダイアモンドリング」 東方文花帖 火符「アキバサマー」 東方緋想天 水符「ジェリーフィッシュプリンセス」 東方緋想天 月金符「サンシャインリフレクター」 東方緋想天 日木符「フォトシンセシス」 東方緋想天 火水符「フロギスティックピラー」 東方非想天則 土金符「エメラルドメガロポリス」 東方非想天則 元ネタっぽいエピソードとか 図書館 魔法 五行説 喘息 一週間 候補地 福島県(服縞…(ry )) 千葉県(数多くの本が取り揃えられているAmazon倉庫がある) 東京都(日本最大の図書館である国立国会図書館がある) 愛知県(ラブリー・ノーレッジ…(ry )) ご当地絵 ランダム画像表示テスト実施中 (ランダムにしつつ画像サイズ揃える方法募集中) random_imgエラー:存在する画像ファイルを指定してください。 名前 コメント すべてのコメントを見る
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東方萃夢想エントリー一覧(上限32エントリー) 番号 エントリー名 使用キャラ 一言 1 TR 霊夢 虚ろの夜なう^^v 2 かみじー 魔理沙 ヾ(๑╹◡╹)ノ" 3 徒歩 咲夜 小林です 4 SYO 魔理沙 SOUND VOLTEXおじさん 5 M-3 レミリア m(・-・ )三 6 らんまん 萃香 7 じゃがいも アリス せっかくなのでー( ´∀`) 8 フットー 魔理沙 昇竜マンからは脱却していたい 9 たづ レミリア お前らに本当の-霊撃-を見せてやろう 10 きゃわ 魔理沙 萃夢想初めて7カ月です!20、21に萃夢想合宿するほど気合い入れてます!!初心者で明らかに経験不足ですが、皆さんに胸を借りるつもりで勝つ気で行かせてもらうので、よろしくお願いします!!! 11 雪風くん アリス 2Cキャンセル霊撃です。しれぇ! 12 涙目 紫 どうも全一です 13 博霊霊夢(本人) 霊夢 主人公です 14 マツダ 妖夢 優勝目指してがんばるぞい! 15 イネ科 妖夢 肘ロケット 16 エフえー レミリア 圧倒的霊撃不足っ…! 17 KazaNeko 幽々子 チッス、亡霊やってます 18 パッド アリス いっくよー!あやめちゃん! 19 腕 霊夢 夢想封印!(鬼神玉を出しながら 20 masa レミリア いいのよ 21 西風堂 パチュリー 慢性的な眠さをぱじゃまで表現 22 素こんぶ パチュリー そろそろ新規は名乗れない芋歴3年目に突入勢 遅刻するかも 23 Kag レミリア 24 紅いお月見 レミリア 1勝できたら初心者やめます 25 ラクトアイス 霊夢 ヒャッハー大会だーッ 26 九十九 咲夜 甲子園球児的に目指せ一勝でいきます 27 きつねそば 紫 ゆかりご飯とお稲荷さんとオレンジピラフの三段構え 28 べぇた 幽々子 ぶひぃ 29 だくまそ 魔理沙 しゅわわー 30 みすみくん 咲夜 みすみくんです。 31 ですNO アリス SRPG製作中です☆ 32 れん 咲夜 がんばる キャラ分布(32人中) 人数 キャラ 6人 レミリア 5人 魔理沙 4人 霊夢・アリス・咲夜 2人 パチュリー・妖夢・紫・幽々子 1人 萃香 0人 美鈴 .
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東方07.5 東方萃夢想 ~ Immaterial and Missing Power 曲名 Title 注釈 Notes xx yy zz xx xx yy zz xx xx yy zz xx
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東方萃夢想 伊吹萃香編 ――博麗神社。幻想郷の辺境に存在している神社である。 鳴く為に、ずっと地中で耐えてきた蝉。 体内の熱を外に放出するかの如く啼く、鳥や獣達。 幻想郷の夏はこんなにも騒がしかったのか……。 長い間続いた宴会はいつの間にか回数を減らし、幻想郷はいつもの平穏さを 取り戻していた。 幻想郷では、イレギュラーであった存在もすぐに溶け込んでしまう。 それが良い事なのかどうかは判らなかったが…… 良い事だと思っていた。 少なくとも霊夢はそう考えていた。 霊夢「暑いわねぇ……今年も。 こんなに暑いんじゃ、掃除する気も失せるわ。 お茶でも入れようかなぁ……。 暑い時は熱いお茶ってね。ぬ~。」 霊夢「それにしても、幻想郷には良く判らない奴が多いわねぇ。 あいつもよく判らない奴だったわ。 何が目的だったのかも判らないし…… それに私は負けたのにねぇ……」 霊夢「まぁ、力仕事の時はどこからとも無く来てくれたり、 お酒を持ってきてくれたり……親切な奴ね」 萃香は、何処に住んでいるのかも判らなかったが、ちょくちょく神社に遊び に来ていた。 でも、本来はイレギュラーな存在である。 溶け込んでしまうのは、幻想郷の力か、それとも霊夢の力なのか。 萃香「暑いよぉ。水でも撒いてよぉ~」 霊夢「あれ、いつの間に後ろに? で、水はあっち」 萃香「私に撒けって言うのね。全く、鬼使いが荒いんだから」 霊夢「鬼、鬼、って言うけど…… 鬼はもう幻想郷には居られなくなって、ここから出て行ったんじゃな かったの?」 そう、今の幻想郷には鬼は居なかった。 居ない筈だった。 その昔、鬼と人間は命を懸けた強い信頼関係で成り立っていた。 強い信頼関係、即ち「人攫い」と「鬼退治」である。 ……だが悲しい事に人間は、姿形は変わらなくても、心は変わる。 鬼が、鬼だけが棲むという鬼の国に居る間に…… 段々と人間は鬼の存在を忘れていったのだった。 萃香「確かに、私達の仲間は滅多に人前には出て来ないけど…… 私は賑やかなのが大好きだから、今の幻想郷は魅力的過ぎるの」 霊夢「賑やかねぇ……。 でも私は、たまには静かにお茶でも飲みたいと思ってるわ」 萃香「もっと私の仲間も、人前に出てくるようになれば良いのに」 霊夢「それは駄目」 萃香「だって……毎晩が百鬼夜行よ?」 霊夢「だって、毎晩が鬼退治になるじゃない」 今の人間に足りない物は、鬼が持つ『誠実さ』なのかもしれない。 そんな嘘吐きだらけの人間を、殆どの鬼は見捨ててしまったのか。 萃香は、鬼の中でも自分勝手で誠実さにもやや欠けるところがあったので、 どちらかと言うと異端児だったのだ。 だから、イレギュラーでもすぐ馴染む。 本来鬼と人間は、人攫いと鬼退治という信頼関係で成り立っているべきだと 言うのに。 萃香は、仲間を幻想郷に戻すチャンスだったのに、失敗してしまったのだ。 萃香は人を萃めるだけではなく、人を攫う必要があったのだ。 失敗したのは、自らの未熟さが原因か? それとも、陽気さか?ほんのちょっとの不誠実さか? ――本当の理由は、霊夢の能力だった事は誰も気が付かなかった。 Ending No.1 (Suimusou Ending) ―― Congratulation! 萃香の人攫いを失敗させた霊夢の能力 全てを受け入れるのは誰の能力でしたっけ? そう言うことですよ。 ―幻想掲示板 2004年12月 関連 紫「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。」 東方萃夢想、対戦勝利台詞
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▼萃夢想レギュレーション 萃夢想のバージョンは1.11を使用します。 Casterは071227かCowCasterの080326を使用します。 ポートは何か理由がない限り基本的に7500を使用します。 対戦するステージは対戦者の希望がなければランダムとします。 [紅魔館時計台 昼] [大木の有る墓地 昼] [幻想郷] の使用を禁止します。 2P妖夢の投げバグの使用を禁止します。 対戦終了時のメニューのデフォルトをリプレイ保存にしておいてください。 [config_caster.ini] の [replaySave] を [1] にする。 浮動小数点に関する同期ズレ対策を行うようにしておいてください。 [config_caster.ini] の [floatControl] を [1] にする。 回線が細い方は観戦を不許可にしておいてください。 [config_caster.ini] の [allowObs] を [0] にする。 ホストを立てた方が1Pになるようにしておいてください。 [config_caster.ini] の [playerSide] を [1] にする。 クラ専同士の対戦にはFakeCasterを使用します。中継役の人はFakeCaster起動し使用ポート入力、IPとポートを対戦者に伝えます。 クライアントの二人は中継役のIPとポートにいつもと同じように凸すれば対戦できます。
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東方萃夢想/月ヲ砕ク ◆Ok1sMSayUQ 全てがどうでもよくなったはずだった。 いや、自分自身のあまりの無知と無恥に絶望していたはずだった。 所詮鬼は嫌われ者。それだけならばまだしも、無意識とはいえ自ら人間との溝を深めていたことに嫌気が差した。 人間を小馬鹿にしてきただけの自分は。自分勝手な論理を振りかざしてきただけの自分は。 死んで当然であり、滅びて然りの存在でしかなかった。 けれど、死ぬ前に助けられた。どこからかやってきた地獄烏と妖精に。 死ぬ機会を脱してしまったと思ったが、すぐにまたひとつ動機は生まれた。 自分が古明地こいしを殺したことだ。 仕方がなかった。どうしようもなかった。――本当にそうだと、誰が言い切れる? 独善的な生活しか営んでこなかった自分は、ただ言い訳をしようとしていただけではないのか。 これまでの所業から逃げようとするあまり、諦めていたのではないか。 きっとそうだ。そうに違いない。だから……彼女のペットだった、霊烏路空に殺してもらおうとした。 案の定、空は怒り狂い今にも殺しそうな勢いで胸倉を掴んできた。 萃香としてはそれで本望だった。 確かに、こいしは最後の最後に正気には戻った。自分だけのせいではないと言っていた。 全ては、辿ってきた過程が悪かったのだと。 けれども……その過程を積み上げてきたのは誰だ? ここに来てからの伊吹萃香は、悪くはなかったのかもしれない。 だがそれ以前はどうだった? 千年以上にわたって堆積させてきた対立という名の軋轢は? 何も気付いてなかった。分かったつもりだったのは表層的なことで、本当の事実に気付かなかった。 結局、いい気になっていただけだったのだ。 こいしに正気を取り戻させたのをいい気になって、彼女から許しを得たのをいい気になって、殺し合いの根本、 歴史が作り上げてきた人間と妖怪の対立という問題から目を背けていたのだ。 こんな殺し合いが、悲劇が続くのは自分のせいじゃないと思いたかっただけ。求めていたのは免罪符でしかなかったのだ。 本当にこいしが伝えたかったのは、この歴史を、憎悪の歴史を変えて欲しかったということだったのに…… 誰も悪くないのではなく、誰もが今以上の責任を感じなくてはならなかった。 こいしの言葉は、責任の所在を薄れさせるものでは、なかったのだ。 殺し合いに加担していない自分は悪くない。殺し合いをする奴が悪い。 そのことばかりに拘って、なぜ殺し合いが起きたのかを、考えようともしてこなかった。 だからこそ、霊夢の言葉をきいたときの萃香の失望感は大きかった。 弱者の復讐。今まで気にさえかけてこなかった存在たちの、驕り高ぶっていた自分たちに対する報復。 始めの方こそ、霊夢のように無差別に襲う連中しか殺し合いはしていなかったのかもしれない。 しかし殺し合いが進み、死が現実となってきたとき、理不尽な喪失に触れた者は恨みの原因を求めるようになった。 今までいい気になってきた妖怪が何もしてこないからこんなことになった。全部妖怪のせいだ。 やり場のない怒りはそれまで抱え込んできた不満に火を点け、殺意という形となって他者に向けられる。 例えば……アリス・マーガトロイドを『誰も助けてくれなかった』と思い、間違った気持ちで突き進むことになったこいしのように。 そうして死は広がる。悪意が悪意を呼ぶようになった。 そんな状況になってもなお、自分は悪くない、悪いのは無意味な殺しをする奴だと思っていた。 その気持ちこそが、殺し合いを広める一因だとも理解せずに。 立場をはっきりさせ、正しくあろうとしていたつもりが、その実無自覚の傲慢を振り撒いていた。 だから自分に絶望した。殺し合いどころか、霊夢さえ止められるはずがないと思った。 上の立場から見下ろしてきたのは事実で、復讐という言葉に何も言い返すことができなかったから…… 萃香は空が殺してくれるのを待った。復讐を否定できなかった鬼が、復讐で殺される。 迎える結末としては出来すぎているじゃないかと自嘲しながら最後の瞬間を待ったが――空は、殺さなかった。 『悪くないなんて言うつもり、これっぽっちもないよ。認めなきゃいけない。それで……どうするか、考えなきゃ。おんなじことの繰り返しだよ』 空は気づいていた。妖怪の傲慢の歴史に。 萃香と違うのは、「それでも」と言えていることだった。 それでも、どうするかを考えなきゃいけない。でなければ、また同じことを繰り返すだけだから、と。 絶望したからって何も変わらない。諦めて退場してしまうのは、高みから見下ろしているのと変わらない。 そんな自分が嫌で嫌で仕方がないというのなら、『なにか』をするしかない。 嫌いな自分を変えることができるのは、自分しかいないのだと、空は言っていた。 萃香は強烈に頬を打たれた感覚を味わった。空に言われるまでまだ自分に甘えていたことよりも、 萃香を見下すことなく同等の存在として接していた空そのものが羨ましかった。 こんな卑怯者の鬼でも、まだ引っ張ろうとしてくれている。まだやれることがあると言ってくれている。 『レトロ原子核モデル』を預け、囮となって飛び出そうとする空を見ながら、だからあいつは妖精と一緒にいるのかと鈍い納得を感じていた。 それでも、と言える強さがあるから、種族や立場で物の見方を変えたりしない。 誰にだって可能性はあるから、妖精でも鬼でも説得しようとする。 そうだ。だから……滅多に笑わず、いつも強がっていたあの氷精が懐いていたのだ。 今度こそ間違えてはいけないと萃香は強く思った。 こいしが本当に伝えようとしたこと。身に沁みて分かったのだから、次はどうするかを考えなくてはいけない。 これからの私達。これからの妖怪。これからの未来―― 犠牲を犠牲で終わらせないために、悲劇で片付けてしまわないために。 萃香は崩落を始めた家の床を蹴り、外に脱出し、強い意志をもった一歩を踏み出した。 そして、走って、走って、走った末に……まさに空たちにトドメを刺そうとしている、かつての医者を見つけたのだった。 「派手な弾幕をばら撒いてくれてありがとう。お陰で見つけやすかったよ!」 空中から力に任せて、永琳に突撃する。 永琳はトドメを刺すのをやめ、即座に萃香に応射しようとしたものの、萃香の周囲を漂っている『レトロ原子核モデル』に気付いて回避を優先した。 軌道を修正し切れず、地面に拳をぶつけるだけの結果に終わったが、とりあえず空たちを守ることはできた。 ぽかんと口を開けて萃香の方を見つめている、ふたりの間抜け面を見れば生きていることは一目瞭然だった。 土で汚れたふたりにニヤと笑いかけてやり、萃香はそれを最後に戦闘に集中することにした。 「伊吹萃香ね……全く、余計なことを」 「五月蝿いな。こいつらは私の仲間だよ。それに手ぇ出すってどういう了見だい」 「殺し合いだから、殺そうとしただけよ。あなたはまた私を殺して解決しようとでもいうのかしら」 「さあね。もうそんな単純な状況じゃないって、分かってる」 この殺し合いの根本は、自分達自身。 永琳が死んで全てが解決するとは微塵も思っていない。 でも、それでも。殺し合いを続けようとするのなら、まずはそれを止める。 それが私にできることだ。……今はこれでいいよね、こいしちゃん? 拳を強く握り、拳法の構えを取った。 腕を軽く曲げ、パンチを放ちやすいように構えただけの、単純なファイティングポーズだ。 だがそれで十分。鬼の怪力は、たとえ蓬莱人であっても一撃で戦闘不能にする。 体力もそうは回復していない。一撃で決めるしかないからこそのこの構えだ。 「あんただけが悪いとは言わない。でも、あんただって悪いと思うね、私は」 「そうね。だから私は、あなたを殺す」 「だから私は、あんたを叩きのめす!」 叫んだ途端、傷が痛んだ。萃める力で塞いでいても、命が流れ出すのを止めることはできない。 しかしその苦痛こそが萃香を覚醒させる。まだ生きている。生きているのなら、やれることがある。 のんびりとするのも悪くはない。遊惰に酒を飲み、過ごす贅沢をするのもいい。 けれども、やはり、こうして動くのが一番性に合っていることを実感していた。 萃香は昔を思い出す。人間と愉しむことだけを考えて、怪力しか取り得のない頭で色々と考え付く限りの悪さをしてきた。 あれも、人間の視点からすれば決して良かったことではないのだろうけど……だが、考えて行動することができていた。 いつからだっただろう。考えることさえ億劫になり、勝利に酔うための酒ではなく、ただ酔うための酒を呷るようになったのは。 勝手に失望し、勝手に引き篭もり、勝手に思考停止するのはもうやめよう。 鬼の望む未来。人間と鬼が仲良く喧嘩できるような未来にするために、今の苦しさに耐えてみせよう。 そのときに呑む勝利の美酒は……とびきり格別であるのに違いないのだから。 萃香の狙いはただ一点。あの蓬莱人に鬼の怪力を見せ付けることである。 バカ正直に真正面から突撃してきた萃香に、永琳は迎撃の弾幕で応じた。 「その原子核モデル、邪魔よ!」 永琳が浮遊する弾幕を射出した。 機雷かと思った萃香だったが、すぐにそうではないことに気付かされる。 あれは機雷などではない。一定時間が経過すると自動で弾幕を射出する『使い魔』である。 力の強い妖怪は大抵『使い魔』を扱うことができる。使い魔といっても、自動的に弾幕を出し続ける性質からそう呼ばれているだけで、 実際のところは河童なんかが使う機械と似ている。 『使い魔』の厄介なところは存在し続ける限り自動的に射撃するというところで、『使い魔』で大量に弾幕をばら撒いて、 動けなくなったところを本命の射撃で撃ち落とすというのが弾幕ごっこではよく見られた光景だった。 永琳が指を傾ける。すると今まで浮いていただけだった『使い魔』が猛烈に弾を吐き出してきた。 「くっ!」 咄嗟に弾の隙間に避難したものの、左右を擦過する弾幕はたちまちのうちに『レトロ原子核モデル』を破壊した。 守りの要がなくなった。そして大量の弾幕に囲まれ、身動きが取れない状況。 やはりこの女、一筋縄ではいかない強さを持っている。 しかし萃香も戦いの中に身を置いてきた鬼の一族である。 瞬時に弾幕の隙間を見切り、当たらないように動き回れるだけの判断力を持っていた。 「流石の鬼といったところね。でも避けるだけじゃこの殺し合いには勝てないのよ」 永琳が銃を向ける。驚異的な速射力と威力を有するこの武器の恐ろしさは既に身を持って体感している。 見てから避けることも不可能に近い。そして何より……この武器の存在を、幻想郷では知らない連中が多い。 だから一度は負けた。蓬莱山輝夜に。そして今度はその従者が自分を狙い撃とうとしている。 だが――二度目は、ない! 永琳は確かに賢い。即座に自分の守りを打ち崩し、最適な方法で殺そうとする。 しかし……永琳は自らの頭脳を、過信しすぎていた。 萃香に対して、遠距離では打つ手がない、と思っていたであろうことがまずひとつ。 そして、萃香が銃の恐ろしさを知っているはずがないと思っていることだ。 だからこそ永琳は銃弾の使用量を最小限にとどめるため、悠々と狙いをつけていたのだし、『使い魔』で近寄らせまいとしていた。 それこそを待っていたと言わんばかりに、萃香は握り拳に妖力を集中させ、めらと燃える火炎の拳を作り上げた。 『妖鬼-密-』。凝縮された妖力を打ち出す、萃香の疎密能力を利用した特製の弾丸である。 雪合戦などでよく見られるように、よく握りこんだ雪球はまるで石のように硬くなる。 『妖鬼-密-』もその類で、萃香によって萃められた妖力は、凄まじい弾幕相殺能力を有していた。 「『使い魔』が邪魔なら……」 萃香は拳を引き、ありったけの力を込めた。 「そいつごと粉砕するまでだ!」 腕を突き出すモーションと共に、凝縮された『妖鬼-密-』が『使い魔』を直撃した。 『妖鬼-密-』は弾幕ごと飲み込み、一撃のうちに完全消滅の道を辿った。 高エネルギーが衝突したことにより、周囲に風が吹き荒れる。砂埃を巻き上げ、それが萃香の姿を隠した。 これで、永琳は狙撃することができない。チャンスはここしかないと感じた萃香は塵芥の中に突入した。 もうもうと視界を遮る砂埃は1メートル先でさえ見渡せなかったが、萃香は永琳の位置を把握していた。 何故なら、自分は疎密の具現。近距離ならどこに気配が萃まっているかも分かる。 特に、永琳の気配は……死を撒き散らそうとする悪意が丸見えだった。 一気に永琳の懐に飛び込む。萃香の接近に気付き、今更のように視線を合わせてきたが、もう遅い。 「萃鬼」 永琳の胸倉を掴んで、一気に空中まで持ち上げる。 最大出力。最強の一撃。動けなくなってもいい。この一発で……全てを決める! 「『天手力男投げ』!」 腕力の増強に全ての妖力を注ぎ込み、萃香は永琳ごと民家へと突撃した。 家にぶつかる直前に、服を強引に抱えての、一本背負い投げを見舞った。 落ちる加速度と鬼の怪力をつぎ込んだ一撃は、木材を粉々に粉砕し、柱の一本も残さずに薙ぎ倒した。 瓦葺きの屋根が崩れ、ガラガラと音を立てながら永琳を埋め尽くす。 萃香はその光景をしっかりと見ながら、しかし己の妖力が尽きたことを自覚してがくりと膝を折った。 傷を無理矢理塞いでいた密の力が欠け、銃創部分から血があふれ出してくる。 「ぐっ……参ったな、医者が必要かもね」 その医者を、ついさっき叩きのめしたのだが。皮肉なことだと思いながら、萃香は後方を見やった。 『天手力男投げ』を行う際遠くまで移動してしまったのか、空とチルノの姿は見えなかった。 だが、確かに見えていたはずだ。あのぽかんとした表情は目に焼きついて離れない。 これが鬼の力。古来より畏れられてきた、何者にも負けない力だ。 「我が群隊は百鬼夜行、鬼の萃まる所に人間も妖怪も居れる物か」 勝利の勝ち鬨を上げるときには、いつもこんな感じの仰々しい言葉を言っていた気がする。 霊夢の言う通り、最近は言葉遊びばかりで、本当はどんなことを言っていたのかも思い出せなくなっていたが。 それでも、今の萃香は自分の言葉に誇りを持ち、胸を張ることができそうだと思えていた。 そうだ。まだ自分達には、これからがある。閉塞した未来だって叩き壊せる、『それでも』と言える力が―― 「そうね。『人間』も『妖怪』もいない。でも『月人』なら居るのよ」 どこからともなく聞こえた声だった。 気がついたときには、胸がびくりと痙攣し、口から大量の血を吐き出していた。 あ……? 萃香が胸に視線を向けると、そこにはいくつもの穴が開き、紅いものが吹き出している。 「鬼の怪力、侮れたものじゃなかったわね」 声を上げることもせずに、のろのろと萃香は振り向いた。 そんな馬鹿な、という思いを抱きながら。 崩れ落ちた、民家の、瓦礫の上。 月を背に、夜で彩り、無表情な姿で、硝煙のたなびく銃を冷酷に構えた八意永琳が、そこにいた。 「掴まれたとき極め返してやろうかと思ったけど、抵抗できないとはね。逃げるので精一杯だったわ」 「そんな、でも、確かに……!」 「状況さえ把握してれば、どうするかなんて考えるまでもないのよ。 視界を遮られる。するとあなたは私に接近して一撃を叩き込む。恐らく私は逃げられない。 じゃあ、それを見越して受け身をしておけばいいだけ」 萃香は絶句した。鬼の一撃を、折込済みだったというのか、この女は。 化け物め、という言葉が浮かびそうになり、そこで萃香は初めて彼女が月人であることを理解していた。 地上の生き物を見下し、下賎な生き物だと蔑んできた連中。しかしそう言い切れるだけの強さを持った連中。 侮っていたわけではない。油断もなかった。ただ……この傷ついた体で、一撃で勝負を決められるはずがなかった。 それほどの根本的な地力の差があったのだ。 「だけど、鬼の一撃を……受けきろうなんて……」 「私は医者よ? 道楽だったけどね。医者は、とても人体に詳しいの。どこが弱いか。どこを守ればいいか。 医者は……とても優れた殺人者なの。それでいて自分を守る術を知っている。あなた風に言うなら、『鬼に金棒』ね」 「く、そ……」 敗北を自覚した瞬間、体が崩れ落ちた。 思えば、家の崩れ方は尋常ではないほど派手だった。 本気だったとはいえ、家全体をまるまる破壊できるほどの範囲のある攻撃でもなかったのに。 恐らく、永琳は投げられながらも、冷静に弾幕を撃ち、その反動でダメージを軽減したのに違いなかった。 結局のところ、彼女の賢しさの方が勝った。鬼はやはり、知恵を用いた戦いには勝てなかったのだ。 「にしても、まだ生きていることの方が驚きだわ。急所を確かに射撃したのに……頑丈なのね」 萃香はもう喋らなかった。 月人との実力差に失望したわけでもなく、死をただ待っているのでもなかった。 力を溜めていた。自分にできることはなにか。やらなければいけないことはなにか。 永琳が頭を空にして、考えることすらやめてしまったのなら、それに敗北したというのなら、自分はそれに逆らってみせる。 鬼は天邪鬼なのだ。 私の力、萃める力、鬼にしかなせない力……それは…… 「……ふむ。もう放っておいても死ぬわね。さようなら、小さな鬼。あなたが体を張って助けたあの二匹もじきに……」 「じきに……どうなるって言うのかしら!」 永琳の佇む瓦礫の上目掛けて、霊烏路空の核の炎でもない、萃香の妖力を纏った鬼火でもない、 永遠に燃え続ける、第三の焔が飛来した。 攻撃を察知した永琳が瓦礫から飛びのく。 崩落した家に衝突した火炎は熱と衝撃波と火の粉を撒き散らし、夜をそこだけ赤く染め上げた。 「残念だけど」 そこに現れたのは、ふたつの影。 全てを見通すかのような透き通った瞳と、小柄ながらも地底の主としての威厳を纏う妖怪、古明地さとり。 月まで届く白煙を思わせる、美しい白髪と、命の輝きを思わせる炎の赤を瞳に塗り込めた人間、藤原妹紅。 気絶させ、逃がしたはずの人間が……今度は、味方を連れて助けに来たのだった。 あの、こいしの姉を引き連れて。 「さとりのペットと妖精なら避難させたよ。そこの萃香が、暴れてくれたからね。見つけやすかった」 永琳がそこで初めて、強張った表情を萃香に向けた。 ざまあみろ、と萃香は内心で言い返す。 いや、口に出せなかった。力は尽き果て、永琳の言う通り、もう少しで死ぬ。 しかしあの月人に最後に一泡吹かせることができたのだから……少しは、勝っていた、はずだった。 私は皆を萃めることができる。 気持ちを広めることだってできる。 それが、鬼にしかできないことだ。 永琳がここで勝っても、まだ妹紅が戦ってくれる。 自分の、自分達の思いを引き継いでくれる。 「医者の癖に、見下げ果てた根性だ。輝夜も輝夜なら従者も従者ね……!」 妹紅が背中から炎の羽根を広げ、その怒りを露にしていた。 「私の可愛いペットに、よくも手出しをしてくれたものです。その罪……万死に値します!」 さとりが妖力を集中させると、彼女の身につけている第三の瞳が不気味に蠢いた。 自分の思いを、受け取って、戦ってくれる頼もしい友人を、仲間の姿を、見ながら。 伊吹萃香は、笑って、死んだのだった。 【D-4 人里のはずれ 一日目・夜中】 【博麗霊夢】 [状態]万全 [装備]果物ナイフ、ナズーリンペンデュラム、魔理沙の帽子、白の和服 [道具]支給品一式×5、火薬、マッチ、メルランのトランペット、キスメの桶、賽3個 救急箱、解毒剤 痛み止め(ロキソニン錠)×6錠、賽3個、拡声器、数種類の果物、 五つの難題(レプリカ)、血塗れの巫女服、 天狗の団扇、文のカメラ(故障) 不明アイテム(1~4) [基本行動方針]力量の調節をしつつ、迅速に敵を排除し、優勝する。 [思考・状況] 1.小町、(いるなら)映姫と合流する 2.とにかく異変を解決する 3.死んだ人のことは・・・・・・考えない 【藤原 妹紅】 [状態]腕に切り傷 [装備]ウェルロッド(1/5)、フランベルジェ [道具]基本支給品、手錠の鍵、水鉄砲、光学迷彩 [基本行動方針]ゲームの破壊、及び主催者を懲らしめる。「生きて」みる。 [思考・状況] 1.永琳を叩きのめす 2.閻魔の論理は気に入らないが、誰かや自分の身を守るには殺しも厭わない。 3.萃香と紅魔館に向かい、にとり達と合流する。 4.てゐを探し出して目を覚まさせたい。 5.輝夜が操り人形? 本当だろうか……? ※以前のてゐとの会話から、永琳が主催者である可能性を疑い始めています。 【古明地さとり】 [状態]:健康 [装備]:包丁、魔理沙の箒(二人乗り) [道具]:基本支給品、にとりの工具箱 [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない 1.永琳を叩きのめす 2.こいしと燐の死体の探索。空の保護 3.西行寺幽々子、八意永琳の探索 4.こいしと燐を殺した者を見つけても……それでも、良心を信じてみたい 5.ルーミアを……どうするのが最善だった? 6.工具箱の持ち主であるにとりに会って首輪の解除を試みる。 [備考] ※主催者の能力を『幻想郷の生物を作り出し、能力を与える程度の能力』ではないかと思い込んでいます。 ※閻魔を警戒 ※明け方までに博麗神社へ向かう ※小町の心を読みました 【八意永琳】 [状態]疲労(中) [装備]アサルトライフルFN SCAR(15/20) [道具]支給品一式 、ダーツ(24本)、FN SCARの予備マガジン×2 [思考・状況]行動方針:参加者の殲滅 1.皆を、殺さなきゃ ※冷静ではあります ※この会場の周りに博霊大結界に似たものが展開されているかもしれないと考えています 【チルノ】 [状態]満身創痍。戦闘不能 [装備]手錠 [道具]支給品一式(水残り1と3/4)、ヴァイオリン、博麗神社の箒、洩矢の鉄の輪×1、 ワルサーP38型ガスライター(ガス残量99%) 、燐のすきま袋 [思考・状況]基本方針:お空と一緒に最強になる 1.前に進む。 2.メディスンを殺した奴(天子)を許さない。 3.ここに自分達を連れてきた奴ら(主催者)を謝らせる。 4.必ず帰る。 ※現状をある程度理解しました ※さとりと妹紅によってどこかに避難させられています 【霊烏路空】 [状態] 満身創痍。戦闘不能 [装備] 手錠 [道具] 支給品一式(水残り1/4)、ノートパソコン(換えのバッテリーあり)、スキマ発生装置(二日目9時に再使用可)、 朱塗りの杖(仕込み刀) 、橙の首輪 [思考・状況]基本方針:チルノと一緒に最強になる。悪意を振りまく連中は許さない 1.前に進む。 2.メディスンを殺した奴(天子)を許さない。 3.必ず帰る。 ※現状をある程度理解しました ※さとりと妹紅によってどこかに避難させられています ※空の左手とチルノの右手が手錠でつながれています。妹紅の持つ鍵で解除できるものと思われます。 ※メディスンの持っていた燐のスキマ袋はチルノが持っています。 中身:(首輪探知機、萃香の瓢箪、気質発現装置、東のつづら 萃香の分銅● 支給品一式*4 不明支給品*4) 【伊吹萃香 死亡】 【残り20人】 154 東方萃夢想/Demystify Feast 時系列順 158 DECOY 154 東方萃夢想/Demystify Feast 投下順 155 それは決して、無様ではなく。 154 東方萃夢想/Demystify Feast 博麗霊夢 161 最後の審判 154 東方萃夢想/Demystify Feast 藤原妹紅 166 空の彼方に(前編) 154 東方萃夢想/Demystify Feast 古明地さとり 166 空の彼方に(前編) 154 東方萃夢想/Demystify Feast 八意永琳 166 空の彼方に(前編) 154 東方萃夢想/Demystify Feast チルノ 170 太陽は沈まない 154 東方萃夢想/Demystify Feast 霊烏路空 170 太陽は沈まない 154 東方萃夢想/Demystify Feast 伊吹萃香 死亡
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東方萃夢想/Demystify Feast ◆Ok1sMSayUQ ここではない『どこか』。 私たちの帰るべき場所。 その言葉は、遙かな高みに存在する“希望”を指し示し、私にだって辿り着ける本当の“豊かさ”であるように感じられた。 『誰か』だけじゃなくて『誰もが』おかえり、と言ってくれる場所。 みんなで、自然とそう言える場所。 それはとっても暖かくて、優しくて……そう、太陽。私にとっての太陽のようなものだ。 見ているだけで、感じているだけで元気になれる。そして、それを掴むのはそれほど難しいことじゃない。 ほんの少し時間をかけて、自分で考えるようになれれば、私にだって手に入れられる。 私は物覚えが悪いし、要領だって良くないから、その程度のことしか分からない。 でも、伝えたい。私の内に存在する、この太陽の暖かさを伝えたい。 だから私は、みんなを助けようとチルノに言った。殺し合いなんかやめて、みんなで帰ろう、と。 チルノは少し俯いて、でも素直に頷いてくれた。 チルノも知っていた。ここではない『どこか』は、私たち二人だけのものじゃないってことが。 「でもさ。もし、それでも……戦うってやつがいたらどうするの?」 言葉は、少し冷たい。でもそれは拒絶する冷たさなんかじゃなくて、私を冷静にさせてくれる冷たさだ。 「ぶっ飛ばす!」 私はそう言った。それは根性叩き直すってことかもしれないし、殺すってことかもしれない。 でも、確実に、自分のことしか考えない本当のバカがいる。反省もせず、自分さえ良ければいいって考えてるバカはいる。 ……メディを殺した、あの天人のように。 それはあっちゃいけない。あってはいけないって、私は思っていた。 「そっか! なるほど!」 チルノはおおっと唸った。 誰にでも分かる、簡単な答えだったからなのかもしれない。 これが今の私たちにできることだった。考えることが苦手な私たちが、それなりに考えて生んだ、答えだった。 そして私たちは人里に向かった。向かった先で、鬼が襲われていた。 無抵抗な鬼に、人間が刃物を突き刺そうとしていたのだ。 一も二もなく、私たちは鬼を助けることに決めた。理由は簡単だった。 無抵抗ということは、決闘を望んではいないということ。それにも関わらず攻撃を仕掛けるあの人間は自分のことしか考えていない。そう思ったからだ。 まあ、だけど、しかし――事はそう簡単には運ばなかったわけで。 ここまでが今までの話。ここからが、今からの話だ。 「おーい、鬼ー。どうしたのさ」 ぺしぺしと頭のてっぺんを叩くも、鬼は沈んだ表情のまま反応もしなかった。 この鬼の名前は伊吹萃香というらしい。ってチルノが言ってた。私も会ったことはある気がする。名前まで覚えてないけど。 「ダメだこりゃ。うん。ダメだ」 そう言って、チルノはやれやれと首を振った。 あの人間――博麗霊夢とかいうらしい――を振り切り、どさくさ紛れに突っ立ってた鬼を連れてそこらへんの家に逃げてきたはいいけど、 肝心の鬼は何も話してくれない。隠れているので怒鳴るわけにもいかず、私たちはほとほと困り果てていた。 放っておくことはいくらでもできたけど、そんなのは私のハートが許さないし、 今のまま放っておいたら霊夢とかいう人間だけじゃなく、他の奴にも狙い撃ちされるかもしれない。 連れていこうにも、手錠があるしなぁ……まったく、誰だこんなことしたの。私だった。 チルノも同じことを考えていたらしく、手錠に目を見やって、はぁと溜息をついていた。私たちの絆の証拠は、困り者だった。 「なぁ」 しわがれた声だった。一瞬誰のものかと驚いて、答えはひとつしかないことにすぐ気付く。 鬼だった。姿勢は変わらず、へたりこんだ姿のまま、覇気のない声が私たちに向かって発されていた。 「なんで、助けたんだよ」 そして、耳を疑いたくなるような言葉が出ていた。 助けるな。お節介だ。そんな意味を伴った言葉だったから。 意味が分からず、チルノと顔を見合わせた。さっぱり分からないのはチルノも同じようだった。 っていうか、ちょっとムカついた。なんで文句言われてんのか分かんない。 「なによ、助けてあげたってのにその言い草は」 「私なんて死ねば良かったんだ」 「はぁ?」 生きていることそのものが屈辱とでも言わんばかりに、鬼の声は投げやりだった。 っていうか、ますますムカついた。骨折り損のなんとか儲けになったことより、どうでもいいと諦めきっている鬼の態度に。 一発制御棒で殴り倒してやろうかと思ったが、制したのは意外なことにチルノだった。 おくう、もうちょっと待ちなよ。その言葉を視線で感じ取った私はぷうと頬を膨らませながら渋々待つことにした。 「なんでそう思うのさ」 チルノの説得が始まる。いつになく、このちびっ子は真剣だった。 時々、この子の……刃物のような冷たさが垣間見えるとき、私はいつものバカ妖精だなんて思えなくなる。 「私が卑怯者だからさ」 鬼は自嘲気味に言った。 んにゅ? 鬼って卑怯なことが大嫌いなんじゃなかったっけ? 時々地霊殿に遊びに来る……誰だったっけ。まあ、あの鬼は確かそんな感じだったのに。 「強いことを笠に着て、高見の見物でいい思いをしてただけ。誰のことも考えてやしない。自分さえ楽しければよかった」 私はこの鬼をあんまり知らない。 口を挟むわけにもいかず、私は黙りこくるしかなく、チルノも同様だった。 「そんな奴が、のうのうと生きてていいって思うかい」 鬼は卑屈に笑った。私は肌がそそけ立つ思いを味わった。 自らの汚い一面を理解し、それに嫌悪するあまり自分の全てを嫌いになってしまったような顔だったからだ。 私は知っている。これは、お燐の浮かべていた表情と同じだ。 全てに絶望し、何もかもが信じられなくなったあまり、絶望とひとつになることを選んだ表情。 全てが許せないから、辛くてたまらないから、闇の一部となって苦しみから解放されようとしている者特有の表情だ。 「あんたらがなんでこんなことをしたかは知らないけど……私は嫌われ者だったんだ。 無自覚の差別。無自覚の押し付け。自分のことばっかりで、誰がどう思ってるかなんて考えもしなかった。 だから、私が、私達妖怪がそうだから、蓬莱山輝夜も、こいしちゃんも私を殺そうとした」 「……は?」 思いもよらぬ名前が出てきて、私は思わず鬼の胸倉を掴んでいた。 こいし、様? 呟いた名前を聞いた鬼は、掴まれた態勢のまま「そうか、あんた確か地霊殿のペットだったね」と虚ろな笑いを寄越した。 私のハートが早鐘を打つ。この鬼を殺そうとした? こいし様が? なんで? じゃあ、こいし様はどうなったの? 殺そうと、『した』? バカな私でも分かる、簡単に想像できる未来。最悪な事実。 チルノが私の腕を引っ張っている。鬱陶しい。黙れ。離れろ。しかしそんな言葉さえ出せないくらい、私の中では色んなものが渦巻いていた。 「私が古明地こいしを殺した」 制御棒を振り上げていた。自分でも気がついたときには、もうそうしていた。 許せない。私が思ったのはただそれだけの……けれど、あまりにも暴力的な感情だった。 私の中にあったはずの太陽が消える。代わりに心に差すのは真っ黒な、悪意だった。 どんな理由があったかなんて知らない。どんな事情があったかなんて知らない。 でも、許せない! こいし様が殺された。こんな――全部諦めてるようなやつに! お燐が言う。ほら、そういう奴ばっかりだろ? と。 天人が言う。ほら、私の言う通り。 そうだ。その通りだ。こんなのばっかりだからお燐もああなったのかもしれないし、メディだって死んだのかもしれない。 ……だけど。 「やめろっ、おくう!」 チルノがしがみついていた。私の制御棒に。 私に太陽の温かさを思い出させてくれた妖精が必死に振り下ろさせまいとしている。 ここで鬼を殺してしまったら、もうここではない『どこか』には行けなくなってしまう。 私の心は、この場所に置き去りになってしまう。 そうして、私もお燐と同じになってしまう。だからやめてくれと、ぎゅっと歯を食いしばるチルノが無言のうちに呼び掛けていた。 「……っ!」 制御棒を下ろす代わりに、私は隠れている状況を承知で叫んだ。そうせずにはいられなかった。 私は我慢ができるほど、賢い子ではなかった。 「なんでこいし様を殺したの!」 涙が溢れていることに、そのとき気付いた。 殺したのと、自分で言った時。本当に死んでしまったと、理解してしまったのかもしれなかった。 放送なんかじゃ信じたくなかった事実。どこかで嘘であってくれればいいと願っていた願望。 でも、それはなくなった。残酷な現実に、私は泣かずにはいられなかった。 こいし様は私達地霊殿のペットをよく可愛がってくださっていた。 一緒に遊んだり、散歩したりすることも多かった。 地底では、私たちペットの地位は正直高くはない。 さとり様が偉かったから苛められることはなかったけど、仲間うち以外で対等に接してくれる方は中々いらっしゃらなかった。 こいし様は格別私たちと遊んでくださった。楽しかった。いっぱい遊んでたから、私の頭なんかじゃ覚えきれないくらいの思い出があった。 なのに……もう、会えないのだ。ずっと。 「元のこいしちゃんじゃなかった。心が……壊れてたんだ」 声が詰まった。それは紛れもなく同じ――お燐と同じ結末だった。 絶望し、壊れた心が、元の友達でさえも殺しに向かわせる。 違う。友達だったからこそ、お燐は私を殺しに来たんだ。 だって、思い出だって信じられなくなっちゃったから、思い出はお燐を苦しめるものでしかなくなってしまったから。 こいし様も同じ道を辿ったのかもしれない。自分を苦しめるもの全てを破壊しようとして…… 気持ちは痛いほど分かった。思い出の中のこいし様はとっても優しかったから、その思い出が、とっても痛い。 私でさえそうなのに、こいし様のような妖怪はどれだけ苦しむことになるんだろう。 チルノはまだ心配そうに私の制御棒を掴んでいた。 私は、チルノがいたからこの痛みに耐えられたし、自分を苦しめる思い出を壊そうと思えなかった。 だったら…… 「こいし様、一人ぼっちだったのかも」 お燐も、会ったときには一人ぼっちだった。裏切られて、ひとりになって、そしてそれが正しいと思うようになってしまった。 孤独は誰かを殺す。私はそのことに気付いた。 お燐も、こいし様も、望まないうちにひとりにさせられ、ひとりを強要させられ、そうして心を壊していったのかもしれない。 最後には、悪意だけを信じるようになってしまった。 「ねえ、鬼。あんたは……こいし様を、殺そうとだけしたの?」 「……違う。何度も呼びかけた。でも、ダメだった」 信じてくれるかは分からないけどね、と付け加えた鬼。「信じるよ」と私は続けた。 鬼は嘘をつかないと知っているから、この言葉は嘘ではない。 でも私が鬼の言葉を信じたのはそれが理由じゃない。 壊れた心は元には戻せない。お燐で、それはよく分かっていた。 戻せるのだとしても、そんなことができるのはごく一部の、とびっきり凄い奴だけなのだ。 私や、私たちのような、ごくごく平凡でありふれた言葉しか持てない存在には、壊れる前に心を通わせるしかない。 けれどそれすら難しい。時間をかけて、少しずつ分かりあってゆくしかないのだ。 その機会すら奪ってゆく連中が、ここにはいる。私たちから心を通わせる機会を失わせてしまう。 それは……この鬼がやったことじゃないって分かったから。 「こいし様を殺したのは、絶対に許せない。許せないけど……でも、こいし様をひとりぼっちにさせた奴の方が、もっと許せない」 本当の犯人。こいし様を孤独で殺した奴こそが、私が殴り倒すべき相手だった。 結果、殺すことになってしまったとはいえ、孤独からこいし様を引き戻そうとした鬼は、本当の犯人なんかじゃないのだ。 「悪くないなんて言うつもり、これっぽっちもないよ。認めなきゃいけない。それで……どうするか、考えなきゃ。おんなじことの繰り返しだよ」 私自身にも言い聞かせるように、強く強く、その言葉を言っていた。 もしあのまま、鬼を殴っていたら。殺していたら。私もまた孤独を振り撒き、誰かを死に至らしめる存在になっていた。 振り撒かれた孤独はさらに伝染し、やがて誰も助からなくなる。どこかでそれは食いとめなくちゃいけない。 それだけは……私が本当に『我慢』しなきゃいけないことなんだ。 「おくう……」 チルノが心配そうに私を見た。 こんな妖精に心配されるなんて、このお空様もまだまだね。 私もまた、最強には遠いみたいだった。 でも、だから目指すんじゃない。 ニカッと笑い返す。再び私の中に灯った、太陽の暖かさを伝えるように。 「なーに不景気な声出してんのよ! このお空様がこんなことでへこたれたり――」 頭でも撫でてやろうかとしたとき、家がぐらぐらと揺れた。それも、思いっきり。 まるで地震だった。とっさにチルノを支える。鬼を見てみると、膝立ちでこそあるものの転んではいなかった。 「な、なによ!?」 地震といえばいつかの事件を思い出すが、その主犯はとうに消えている。じゃあこれの犯人は…… 思いを巡らす間に、柱がみしみしと軋んだ。やばい。あれは崩れる。 ぱらぱらと落ちてくる木屑や藁片が、崩落の予兆だった。 早く逃げないと! チルノを脇に抱えて退散しようとしたが、ふと鬼の方を見ると、まだ呆然としていた。 「ああもう!」 見ていられず、私は咄嗟に鬼へと向かって『レトロ原子核モデル』をプレゼントしてやった。 『レトロ原子核モデル』は言わば弾幕のバリアだ。周囲をぐるぐる回る原子核が守ってくれるって寸法である。 私はこういう守りのスタイルはあんま好きじゃないから殆ど使わないんだけど。 「鬼も早く逃げな! 私らがおびき寄せてやるからさ!」 「は……」 鬼がぽかんと口を開け、何か言いたそうにこちらを見たが、知ったこっちゃない。 どんなことをしたかは知らないが、多分犯人はあの紅白だ。 業を煮やした末にこんな派手な攻撃を仕掛けてきたに違いない。負けてたまるか。 別に鬼を庇うわけじゃない。パワー勝負で負けたくないだけだ。 「行くよチルノ! 準備いいね?」 「あたいはいつだって全開だよ! っていうかコドモ扱いすんな!」 脇に抱えていたはずのチルノはいつの間にか脱出していた。 どうやら気に入らなかったらしい。そっか、相棒だもんね。 相棒。心の中でもう一度口にしてみる。いい響きだった。 私たちが友達を持ったり、仲間を作ったりするのは、ただ寂しいからだったり、力が弱いからという理由だけじゃない。 ひとりでは結論を出せなかったり、間違った答えに辿り着いてしまうこともある。 でもふたりなら違う。いくつもの意見があって、私たちはそのどれもを選んでゆくことができる。 そうして私たちはここではない『どこか』に行けるように、ケンカしたり、寄り道したりしながら、進んでゆくのだろう。 家を飛び出すと同時に――攻撃の手はすぐにやってきた。 やはりさっきの紅白だった。手に妙な団扇みたいなものを持っている。 「あ! 天狗の団扇じゃん!」 「そうよ。たまにはこういうのも役に立つものね」 チルノに応じるようにして、紅白が団扇を一振りする。 途端、凄まじい烈風が吹き荒れ、小柄なチルノの体を吹き飛ばしてしまう。……ってことは。 ぐいと私も引っ張られ、空へと舞い上げられる。 「ちょっ!」 なんとか姿勢を正し、翼を広げて吹き飛ばされるのを食い止める。ぎゃっと悲鳴が聞こえたような気がした。 構わず火炎弾で応射する。なりは小さくても、威力は抜群。 が、紅白はひらりと私の弾を避け、さっきの小型バラバラ弾を撒いてくる。 あれは苦手だった。しかしこっちも迎撃できるだけの余裕があるのだ。不意打ちを食らったさっきとは違うのよっ! 「そんなもんかき消してやる!」 今度は少し気合いを入れ、巨大な火炎弾で応射。 あんな小さいのは飲まれて消えてしまえ! 私の放った火炎弾はバラバラ弾を丸ごと飲み込み、紅白へと向かってゆく。 「どう!? 私のパワーは……」 が、紅白は対して慌てる素振りもなく、団扇をまた一振り。 ふふん、風で私の炎を消そうって魂胆ね? ばーか、火は風に煽られると強くな…… 「バカおくう! 避けろっ!」 「へ?」 ぺしぺしと頭を叩くチルノ。 何事かと思ってよく見てみると……『火炎弾が私に向かってきていた』。 「わ、わわわっ!?」 あり得ない事態に頭がパニックになりながらも、私は上昇して弾を避ける。 チッ、と足元を火が掠める。まさに間一髪だった。 「へー、案外使えるじゃない」 一方の紅白はピンピンしている。 なにこれどういうこと? 「あいつが跳ね返したんだよっ! 天狗の団扇で!」 頭がバカになりかけた私をチルノがフォローしてくれる。 はぁ? 風で跳ね返したっての? 「な、なんでそんなの知ってるのよ」 「だってあの天狗、よくあたいをつけ回してたし」 あんまり理由になってない気がするが、恐らく、あの団扇の持ち主がよくこういうことをしていたのだろう。 恐るべき団扇である。でも…… 「負けてたまるか! 『メガフレア』!」 パワーをコケにされて黙ってるわけにはいかない。 跳ね返されるのなら、跳ね返せないパワーの砲撃を加えてやればいい。 私たちの体よりも大きい、まさに地獄の業火とも言うべき弾が紅白に向かう。 威力が違うと察知したのか、紅白は先程よりも早く団扇を振って烈風を巻き起こしたが、そんなもので私のメガフレアが跳ね返せるはずがない。 風に煽られはしたものの、全く動じることなくメガフレアは突き進む。 避けるしかないと判断したのか、紅白は横に大きく動きメガフレアを回避し、そのまま逃げようとする。 ようし、勝った! 「満足してる場合かっ! 追わないと!」 ガッツポーズを作っていた私にチルノが突っ込む。 わ、分かってたわよ。それくらい。 口に出すのは恥ずかしいので心の中で言いつつ、紅白を追撃するために羽を全開に広げ、加速しようとしたとき。 ちらとこちらを見た紅白が、ニヤと笑ったのを私は見逃さなかった。 追いつけるもんか、という笑みではなく、罠に引っかかったことを確信する笑み。 不穏なものを感じた、その瞬間。 けたたましい音が鳴り響き、私の羽を直撃した。 私の羽を貫通したなにか。小さいけれど、超スピードで貫通したらしいそれは、弾幕に当たったときの比ではない痛みをもたらした。 焼けた棒を押し付けられた感覚が広がり、私の意識が飛びそうになった。 空中に浮いていられず、チルノを乗せたまま落下してしまう。 「お、おくう! 落ちてるよ! おくう!」 チルノの声が、どこか遠い。 羽が痛い。動かない。 体全部が、動かなかった。 再浮上することもできず、私はチルノ共々地面に落っこちて勢いのついたままゴロゴロと転がった。 かはっ、と呻きが飛び出す。それが自分のものなのか、チルノのものなのかも分からなかった。 「おくう! しっかりしろおくう!」 チルノが私の体を揺さぶる。応じようとしても、頭はいたいいたいと悲鳴を上げるだけで、命令を出させてくれない。 激痛の中、私が思ったのは、ここにいる敵は紅白だけではないということだった。 チルノはそれに気付いているのか? 問いかけようとしても声も出ない。 もし気付いていなかったら、すぐにでも隠れなきゃいけないのに。 あんな早すぎる弾幕なんて聞いたこともない。それに、この威力はなに……? そんな私の疑問に答えたのは、まさに今私が考えていた、新しい敵だった。 「霊夢、何のつもりか知らないけど……的を作ってくれたのだから感謝しないとね」 「お、お前……竹林の!」 「あら、ご存知だった? 八意永琳と言いますわ。お見知りおきを」 もっとも、と永琳と名乗った赤青は、変な黒い筒を私たちに向けていた。 あれが、あの弾幕の正体? 何かを撃ち出す機構であるのは私にも分かる。あれが超高速弾幕の正体なのか? 「すぐに死ぬでしょうから、覚えてても意味はないと思うけどね」 指が動きかかる。まずい、来る……! 無駄だと分かりつつも防御しようとした。 しかし、その前に――立ちはだかったチルノが、赤青と同じようなものを構えていた。 幾分か小型。しかし筒状の、黒い物体だ。 「あたいだって持ってるぞ!」 「……あら」 見よう見真似で片手で黒筒を持ち、チルノが相対する。 しかし、あれは偽物だ。私たちは知っている。 それを使おうとして、ちっぽけな火を出しただけのメディの姿を…… 「さっきおくうを撃ったのはお前だろ! もっかいやってみろ! お前もただじゃ済まないんだからね!」 虚勢だ。私には分かる。勇敢に叫びながらも、チルノの手は小刻みに震えている。 時間稼ぎになるかどうかさえ分からない。同じ武器を突きつけられているというのに、赤青は妙に冷静だったからだ。 まるで最初から、これが偽物だって分かってるかのように。 「やってみる? 私は丈夫だから、そんな拳銃の一発や二発じゃ死なないわよ」 「そ、そっちこそ後悔すんなよ!」 お互いそんな言葉を放ちながらも、一発目を撃ち出さない。 あの赤青にしてもなるべく手傷は負いたくないのだろうか。 いや、チルノが化けの皮を曝け出すのを待っているのかもしれない。 あれが偽物かもしれないという疑いを持っていて、安全を確認するために時間を使っているのか。 まずい。だったらこの膠着は私たちに不利……! 援護しようとした私だったが、相変わらず体は痛く全然動かない。 ちくしょう! こんなときに! いつもそうだ。メディのときだって、今だって、私は肝心なときに動けてないじゃない……! 「どうしたの、撃たないの、妖精さん」 「うるさい! なによあんた! なんでこんなことすんのよ!」 「なんで?」 赤青が、くすっと笑った。 どこか自虐的で、諧謔的な笑み。 まただ。どうしてどいつもこいつも、お燐みたいな笑い方をする。 いや――既に、蔓延しているというのか。孤独という病気が。何もかもを壊してもいいと思える絶望が。 「だって、殺し合いでしょう? じゃあ私も……みんな殺さなきゃ。ねえ、そうでしょう?」 その言葉は、私たちにではなく、他の誰かに向けられているような気がした。 ここにはいない、しかしあの赤青には見えている誰か。 赤青を壊してしまった誰かが、ここにはいたのだ。 やっぱり、こいつも…… 「時間ね」 私たちの返答を待たず、赤青は淡々と言った。 「じかん……?」 「霊夢が来るんじゃないかって、罠を張ってたんだけど」 言うと同時、赤青が黒筒を下ろす。 まるでそれがスイッチになったかのように。 大量の弾幕が、隙間なく私たちを取り囲んでいたのだった。 「天丸『壺中の天地』。さよなら。土にまみれて這い蹲ってなさい」 反則だ。こんな避ける隙間もないほど弾幕を展開できる奴を、私は知らない。 紅白の狙いはこれだった。私たちをおびき寄せ、この反則級の強さを持つ赤青と戦わせるための―― もうどうしようもないと悟った瞬間、弾幕が私たちに殺到した。 チルノを庇う暇さえ持てなかった。 私たちは弾幕という壺の中で弄ばれ続ける。 体中をハンマーかなにかで殴られる感覚が断続的に続く。 悲鳴さえ上げる間もなく次の弾幕が命中し、嬲られる。 まるで拷問だった。意識を失わせない程度の威力も苦痛以外の何物でもなかった。 「……ふむ、確かに弾幕じゃトドメは刺せないみたいね」 ようやく弾幕が収まったころには、もう指の一本さえも動かせないほど、満身創痍の状態になっていた。 チルノも隣で苦痛の呻き声を上げていた。気絶でもしていればまだ楽だったのだろうけど、あの赤青は狙って気絶させなかった。 なんて性質の悪い、と感想を抱きながら、こちらを見下ろす赤青を睨みつけてやる。チルノも同様に睨みあげていた。 せめてもの抵抗だった。気持ちだけでも絶対に負けないように。 だって、私は……私たちは、最強なんだから! 「弾は勿体無いけど、仕方ないわね。今楽にしてあげる」 そんな私たちに、赤青は一瞥をくれただけだった。 下賎な動物でも見るような目だった。何もかもを犠牲にしていいと思えるようになると、こんな目ができるらしい。 赤青が黒筒を向ける。先程の超高速弾幕が来る。 目は閉じなかった。まだ負けてない。逃げるわけには……いかないんだ! 「派手に暴れてくれてありがとう。そして今度こそ、さようなら」 「『ありがとう』は――こっちの台詞だ!」 それは、今までに聞いたことのない裂帛の声だった。 遙か上。空から飛んでくるのは、小さな鬼。いや……『百鬼夜行』だった。 * * * 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 時系列順 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 投下順 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 博麗霊夢 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 藤原妹紅 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 古明地さとり 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 八意永琳 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 チルノ 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 霊烏路空 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク 154 東方萃夢想/御伽の国の鬼が島 伊吹萃香 154 東方萃夢想/月ヲ砕ク
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東方萃夢想 八雲紫編 ――博麗神社。幻想郷の辺境に存在している神社である。 予定通り行われた宴会はいつもより盛大な物となった。 何故なら、いつもは居なかった紫と萃香、それと…… 不思議な瓢箪が加わったからである。 最初は酒を取り上げられた事で一触即発な雰囲気を醸し出していたが、 紫と萃香が乱入すると、紫に持っていかれたお酒も無事だと判り、すぐにそ の場は収まったのである。現金なものだ。 紫はみんなにお酒を奪った理由を、萃香が持っている鬼宝「伊吹瓢」を、 奪う為のおとりに使った、と説明したものだった。 霊夢 「凄い……。この瓢箪、幾らでもお酒が出てくるわ」 魔理沙 「瓢箪の中を見てみたいぜ」 咲夜 「アルコールランプにも使えるかもしれないですわ」 みんな、無限にお酒が湧いて出てくる不思議な瓢箪に夢中だった。 レミィ 「あれ? もう出て来なくなったけど……」 魔理沙 「うわ!何やってるんだよ。中身を捨てるな、勿体無いなぁ」 霊夢 「大丈夫。そこの砂利は水捌けが良いの」 魔理沙 「幾ら無限に湧くったってなぁ」 萃香 「あ~ひっくり返しちゃ駄目~。 TILTが働いたのね。 転倒防止で一度に瓢箪以上の量は出て来ない様になってるの。 そういう時は栓をして振ると……」 レミィ 「あ、チャプチャプ音がしてきた!」 萃香 「ね、すぐに満たされるの。心のスキマ」 咲夜 「って、また捨ててはいけません。お行儀が悪いですわ」 レミィ 「だって……面白いじゃないの」 幽々子 「ところで、紫がさっき言ってたいた理由……。 本当は違うんでしょ?」 紫 「このお漬物は美味しいわね」 妖夢 「神社の漬物だそうですよ。それよりもあの瓢箪、凄いですね!」 紫 「そうでしょう? だから何とかして引っ張りだそうとしたの」 幽々子 「いつから妖怪はこんなに嘘吐きばかりになったのかしら?」 「伊吹瓢」と呼ばれたこの瓢箪は、見た目は普通、もしくは普通以下の瓢箪 だったが、その不思議さでは群を抜いていた。 それもその筈、この道具は鬼の品だったのだ。 パチェ 「それにしても、何で瓢箪なのかしら?」 アリス 「そんなの簡単じゃない。 くびれている部分にビー玉が入っているのよ」 妖夢 「って、ラムネじゃないんだから」 パチェ 「そういう意味じゃなくて…… 何で剣じゃ無いんだろうと思ったの」 アリス 「剣?何言ってるの?剣からお酒?」 妖夢 「って、何で剣から何かが出る必要があるのよ。剣は斬る物!」 パチェ 「お酒好きの化け物を、お酒で釣って退治して出てくるものって…… 剣でしょ?」 紫 「あら、私はスサノオね」 暫くの間ずっと連続していた宴会も、この宴会を境に減っていくだろう。 最も盛り上がったこの宴会を最後に。 紫以外には宴会の回数が減った理由も、そもそも多かった理由も判らなか った…… 萃香も伊吹瓢も、今の幻想郷には居ないはずの代物だった。 別の世界のものは、既に調和の取れた幻想郷に取って、異物でしかない。 外来品と同じで、余り流れ込み過ぎては、閉ざされた幻想郷には良くないの である。 だから、転倒防止機能が働いてお酒も一気には流れ出ないのだ。 力も同じだった。 萃香の力も誰も止めないまま、あのまま流れ続けていたら……。 転倒防止機能が働いてしまって居たのかも知れない。 Ending No.2 (Yukari Ending) ―― Congratulation!
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ストーリーモード Stage1:サテライト Stage2:シティ湾岸 Stage3:収容所 Stage4:パイプライン Stage5:シティ中心部 Stage6:シティ湾岸(R) Stage7:シティ郊外 Stage8:スタジアム
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東方萃夢想 博麗霊夢編 ――博麗神社。幻想郷の辺境に存在している神社である。 もうすっかり春の空気は流れ去り、風は夏の空気を循環させていた。 花見からずっと続いていた宴会騒ぎも、段々と回数が減っていった。 宴会もこの位の回数が丁度良い、と、誰もが思っていたのである。 霊夢 「あー、暑いったらありゃしない。 この日差しの強さはおかしいわね。また何者かの仕業かしら」 「って妖怪や幽霊は日光に弱い奴も多いし、そんな訳無いか」 「前よりは頻度は減ったけど、今晩、また宴会よねぇ」 「これもあんたの仕業かしら?」 萃香 「違うわよぉ。これはあの黒いのの自由意志でしょう? 元々、みんな賑やかなのが好きなだけなのよ」 霊夢 「喧しいのと、賑やかなのを一緒にされてもねぇ」 霊夢 「大体、宴会の次の日に裏庭をみるとげんなりするのよ」 萃香 「死体でも埋まってた?」 霊夢 「散らかすだけ散らかして、それでみんな帰っちゃうから」 萃香 「バラバラ死体ね。うーん、猟奇的」 霊夢 「そうか。あんたが居るじゃない」 萃香 「居るよ、さっきから」 霊夢 「今夜からさぁ、宴会後のごみを集めといてよ」 萃香 「そんな事…… お安い御用よ。ねぇタダ酒呑めるんだもん」 霊夢 「誰がタダって言ったのよ!」 萃香 「ほら、早速誰か来たわ。そろそろ宴会の時間かしら?」 霊夢 「それじゃぁ、よろしく頼むわよ」 萃香 「あの黒いのがバラバラ死体になるから、萃めて戻せばいいのね。 楽勝よ」 霊夢 「……それでも良いや」 岩を砕くと、幾つかの石が生まれる。 石を砕くと小石になり、さらに砕くと砂になる。 砂は、粒単体の事を示すわけではない。萃まって一つの砂になるのだ。 物は分散させ過ぎるとまた一つの物になる。 バラバラ死体も、究極までバラバラにすれば…… それはまた死体とは別の物になるのかも知れない。 Ending No.3 (Reimu Good Ending) ―― Congratulation!